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研修生は会社員! 堅実に歩む“独立就農”

  • 三重県 JA伊勢 あぐりん伊勢(三重県伊勢市)
  • 2025年8月

研修生は会社員! 堅実に歩む“独立就農”

生産者の減少という課題を抱えるJA伊勢。
解決の一手として新規就農者を育成し独立の後押しをする会社を創設しました。

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 伊勢神宮のお膝元、三重県は伊勢市。市域を含む県東南部を管内とするJA伊勢は、生産者減少の課題に歯止めをかけようと、平成二十四年に農産物の生産や新規就農者の育成を支援する「株式会社あぐりん伊勢」を創設しました。
 二ヘクタールから始めた圃場は、今では約五十ヘクタールの規模へと拡大。JAの主要品目である青ネギやイチゴ、米、小麦などを栽培しています。そして農産物の生産とともに、新規就農希望者の実地研修をしています。
 就農希望者の研修期間は、およそ二年間。一年めは基本的な栽培技術を、二年めは実践的な栽培技術と農業経営を学ぶ、と説明してくれたのはあぐりん伊勢・農産部部長の澤山和人さんです。

「研修期間中は、当社で社員として雇用します。給料をもらいながら学べるのは、大きなメリットです。技術はもちろん、独立に向けた融資や補助金の相談のほか、ハウスを含めた圃場のあっせんもします。これが総合事業であるJAグループの強みです」
 研修生は、三十~四十代が中心です。在職中から独立就農を検討する人が多く、当初四月スタートだった研修期間は、研修生の都合に合わせて開始時期を調整。随時一~四人を受け入れています。
「管内での独立が条件なので近郊在住者が多いです。他府県からの移住者もいます。面接では、独立後の栽培品目や規模、収入支出面もお話しします。研修中に辞めた人は二割ほど。今では十七人の卒業生が、イチゴや青ネギの生産者として活躍しています」
 と澤山部長は話します。

農産物の生産と独立就農の支援

 風薫る五月の圃場では、五月末で研修期間を終える研修生の前田諭志さん(37)が、イチゴの収穫に励んでいました。卒業後は、実家のそばの空きハウスを譲り受けて妻とイチゴ栽培を始める、と話す前田さん。
「大学卒業後は、介護などの仕事をしていました。米作りを営む父に『将来は土地を継いでほしい』と言われ、就農を考えるようになりました。夫婦で決意して研修生に応募したんです」

 あぐりん伊勢の研修では、期間中に地域の生産者やJA各部門とつながりができるところがいい、と話す前田さん。
 十四年めを迎える研修制度ですが、ここ数年の課題はハウスや農機具などの資材高騰です。独立費用がかかりすぎることで就農を諦める人も。あぐりん伊勢では独立時のイニシャルコスト(初期費用)を抑えられるよう、補助事業を活用して建設したハウスのリース展開も進めていると、澤山部長は言います。
「補助金を活用した、独立就農につながる仕組みづくりを検討しています。地域の生産者からは『新規就農者が増えて生産部会に活気が出てきた』との声をいただいています。農産物の生産と独立就農の支援、この両軸で地域を盛り上げていきたいですね」

文=森 ゆきこ 写真=前田博史

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