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でん粉団子汁
- 鹿児島県 JA鹿児島きもつき女性部(鹿児島県鹿屋市)
- 2024年11月
サツマイモ産地の家庭の味をどうぞ!
でん粉団子汁
家族の体と心を温めてきた産地ならではの郷土料理です。
この逸品を、次代へと伝えていく女性たちに出会いました。
鹿児島県鹿屋市にある「どっ菜市場」は、JA鹿児島きもつきが運営する県内最大級の農畜産物直売所。毎年十二月には大感謝祭があり、人気を呼んでいるのがJA女性部の「でん粉団子汁」です。手作りの郷土料理が無償で振る舞われることもあり、三百食があっという間になくなってしまいます。
好評を受け、昨年地元で開催された国体のバレーボール会場でも提供したところ「すごい反響だったのよ」と、JA鹿児島きもつき女性部部長の中園朱美さん(66)は笑顔で振り返ります。
「サツマイモのデンプンで、こんなにおいしい料理ができるんだ、と驚いていました」
シラス台地が広がる鹿屋市周辺では、昔からサツマイモ作りが盛んでした。地域のあちこちには、サツマイモを原料としたデンプン工場もあり、作られたデンプンは小麦粉やかたくり粉の代用品として、日常的に使われてきたのだとか。なかでも親しまれてきた家庭料理が、この「でん粉団子汁」です。
プルプルな食感地域の“元気の源”
「“でん粉汁”と呼ぶ地域もあります。冬の寒い時期に食べることが多いですね。心身ともに温まります」
「昔は大家族だから、米が足りなくなるんですよ。そんなとき野菜をいっぱい入れて、母が作ってくれました」
「これで命をつないできたんです。そんな時代もあったのよね」
と、思い出を語る女性部役員のみなさん。
一方、大阪出身の峯添サダミさん(75)は、初めて見たときにびっくりしたそう。
「お団子が、オタマジャクシが生まれる卵に見えて(笑)。でも今は、大好きですよ!」
実際に作っていただき、その話に納得しました。デンプンに熱湯を加えて作っただんごは、鍋の中で火が通ると、あら不思議。半透明になっていくではありませんか。プルプルとした弾力のある食感と、つるっとしてのどごしがよく、いくつでも食べられます。野菜から出ただしの味も、だんごにいいぐあいにしみこんでいます。
そんな郷土の味も、若い世代の家庭ではあまり作られなくなっているそうです。
「でん粉団子汁は、この地域の“元気の源”。もっと若い人たちにも、知ってもらえる機会を作っていきたいです」
と中園さんは意気込みます。女性部が振る舞う一杯には、「ふるさとの食文化を残したい、伝えたい!」という熱い思いが込められています。
「でん粉団子汁」の作り方
材料(4人分)
- デンプン(サツマイモ) 250g
- ニンジン 1本
- シイタケ 4枚
- ハクサイ 2枚
- 長ネギ 1本
- 和風顆粒(かりゅう)だし 適量
- だしじょうゆ 大さじ6
- 水 1200mL
❶ 野菜を食べやすい大きさに切る。鍋に水を入れて加熱し、和風顆粒だし、ニンジン、シイタケ、ハクサイを入れる。
❷ デンプンをボウルに入れ、熱湯適量を少しずつ加えながら混ぜる。粘りが出て、粉っぽさがなくなるまで混ぜる。
❸ ニンジンに火が通ったら、②をスプーンで一口大にちぎりながら鍋に入れていく。
❹ だしじょうゆで味をととのえる。デンプンだんごが煮えて半透明になったら、長ネギを加えて完成。分に切って完成。
豚肉や鶏肉を
入れても
おいしいです
文=茂島信一 写真=繁延あづさ