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たらおさ
- 福岡県 JA筑前あさくら 東峰地区女性部(福岡県東峰村)
- 2025年8月

お盆の帰省での楽しみな逸品
たらおさ
大分県日田地方から福岡県筑後地方にかけて伝わる郷土の味です。
ふるさとのお盆に欠かせないおもてなし料理です。

緑の山々、コンコンと湧き出す清らかな水など、日本の原風景がいまなお残る福岡県東峰村。この山里に夏の到来を告げるのが「たらおさ」です。たらおさとは、タラの内臓(エラと胃)を干して作られる乾物や、それを使った料理のこと。ここ東峰村や、お隣の大分県日田市、筑後川流域の広範囲で、たらおさをお盆に食べる風習が受け継がれています。
「盆に食べるから『ぼんだら』と呼ぶ地域もあるみたい。昔、日田は天領だったでしょう。北前船で運ばれてきて、それが広まったそう。海から離れたこの地方では、海産物は貴重だったのでしょう。干物だけど、いい値段もするし、おもてなし料理なんですよ」
教えてくれたのは、JA筑前あさくら東峰地区女性部部長の梶原晴子さん(63)。
「うちは本家なので、お盆には毎年たらおさを十本使います。材料費は一万円じゃ足りません(笑)。でも帰ってくる家族がみんな楽しみにしているんです。ここで生まれ育った人には、懐かしい、ふるさとの味なんですよ」

煮こみ続け三日めが最高

調理はまず、たらおさを水でもどす作業から始まります。常温の水なら、ときどき水を替えながら丸一日つけておき、カチカチだったたらおさが、クニャクニャと曲がるようになったら準備オーケー。一口大に切って、水とともに鍋に入れ、酒、砂糖、しょうゆ、みりんで甘辛く煮つけていきます。たらおさに味がついてきたら、その他の具材を投入。さらに一時間以上煮こみ、たらおさがやわらかくなったらできあがりです。

たんに甘辛いだけでなく、タラ、シイタケ、タケノコ、ゴボウなど、さまざまな材料のうまみが凝縮。やわらかくなったエラや軟骨のプリプリ、コリコリした食感も楽しく、後を引くおいしさです。
「手間はかかるけど、みんな楽しみにしてるから、今年も作らなくちゃ」
「お盆の八月十三日から煮こみ続けるから、十五日が最高においしいのよね」
「これからも受け継がれてほしい味ね」
そう話すみなさん。JA筑前あさくら女性部では、各地区の郷土料理や、特産品を使った料理をPRするため、料理を持ち寄って住民に振る舞う「クッキングフェスタ」を開催しているそうです。
「筑前あさくら管内は、食材の宝庫。これからも豊富な食材を生かした活動に、力を入れていきたいです」
JA筑前あさくら女性部部長の印丸美和さん(60)が、力強く話してくれました。

「たらおさ」の作り方

材料(20人分)
- たらおさ 9本
- 酒 100mL
- 砂糖 220g
- しょうゆ 260mL
- みりん 100mL
- 干しシイタケ 100g
- 干しタケノコ 170g
- こんにゃく 2枚
- ニンジン 3本
- ゴボウ 2本
※干しシイタケ、干しタケノコは水でもどす。具材は食べやすい大きさに切る。
❶たらおさを水につける。もどし時間は常温なら約1日が目安で、ときどき水を替える。

❷ やわらかくなったら一口大に切り、鍋に入れ、水をひたひたに入れる。火にかけて沸騰したら、調味料を入れて煮こむ。

❸ 少し煮汁が減って、たらおさに味がつき始めたら、ニンジン以外の具材を入れ、様子をみながら弱火で1時間ほど煮こむ。

❹ ニンジンを入れ、調味料(分量外)で味をととのえ、さらに30分ほど煮こんだら、できあがり。翌日ふたたび煮こむと、さらにおいしくなる。


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ピッタリ
文=茂島信一 写真=下曽山弓子