大地のおくりもの
ハクサイ
- 和歌山県 JAわかやま キャベツ・白菜(軟弱)連絡協議会(和歌山県和歌山市)
- 2026年2月

寒空の下で耐えひときわ甘くなる
ハクサイ
昭和四十四年ごろ、水田の裏作として始まった秋冬どりのハクサイ。
生産者は「次世代につなげたい」と、汗を流す日々です。

冷たい風が吹き抜ける初冬。和歌山湾に紀の川が注ぐ和歌山市では、みごとに結球したハクサイが大地を埋め尽くすように育っていた。
和歌山平野は、紀の川の上流から運ばれた大量の土砂が堆積して形成された扇状地。温暖な気候と豊富な水の恩恵を受け、古くから水田が形成されてきた。昭和四十四年ごろ、市東部の和佐地区を中心に、水田の裏作として秋冬どりのハクサイが栽培されるようになった。
JAわかやま管内の生産者から成る「キャベツ・白菜(軟弱)連絡協議会」中央ブロック白菜部会会長の角田勲治さん(63)は、父親の代からハクサイ栽培を続けている。
「ここは海岸沿いの砂土と、山際の粘土がちょうどよく混ざった土壌。水はけがよく、保水性、保肥力もあり、品質の高いハクサイが育ちやすい土地です」
秋冬ハクサイが出荷されるのは、十一月〜翌年三月上旬。年間を通じて比較的温暖な地域だが、冬の夜間や明け方は気温が氷点下になることもある。年末年始、凍てつくような寒空の下で耐えたハクサイは、ぐっと糖度を高めて、ひときわ甘くおいしくなる。

生育の前半でパワーを上げさせる
和歌山市では、現在でもハクサイが水田の裏作として栽培されている。ハクサイ苗の植えつけ時期に間に合わせるため、夏は『ハナエチゼン』など八月中に収穫できる極早生品種の水稲を栽培。稲刈りをしたあと、まずはトラクターで稲の残渣を肥料といっしょに鋤き込んで細かくする。
すかさず二回、三回と表層を耕し、四回めには十五センチほどの深さまで耕して畝を立てる。角田さんは、こうした残渣の鋤き込みから畝立てまでを一日で終わらせる。
「土が乾いているときを狙って、残渣の鋤き込みと畝立てをします。時間との勝負。雨が降って湿っているときにトラクターをかけると、土が硬く締まってしまいます。苗を植えたあとは雨が降ってほしいのですが、なかなかうまくいきませんね」
角田さんのハクサイ栽培の面積は一ヘクタール。九月中旬〜十月中旬、約一か月をかけて急ピッチでハクサイの苗を順次植えていく。どんどん苗を植えていかなければ適期のうちに終わらない。さらにたいへんなのは、植えつけ後の苗の水やり。手作業で一株ずつ、まだ活着していない苗を傷めないよう、ていねいに水やりをしていく。

近年は、残暑が厳しい。そのため、生育初期の高温と干ばつに悩まされている、と角田さんは話す。
「近年の夏は、パイナップルでも育てようかと思うくらいの暑さです。乾燥が続くとハクサイはカルシウムが吸えず、中心部が茶色くなり、出荷できなくなります。その対策として、この辺りのハクサイ農家は、井戸水をくみ上げて畝間に流し入れています」
逆に、大規模な水害に遭ったこともあった。十年ほど前、大雨によって圃場が浸水し、出荷間近のハクサイの半分ほどが傷み、出荷できなくなってしまった。ハクサイは過湿に弱いため、畝を二十〜三十センチと高めにして、排水のための溝を造っているが、それでも天災には対応しきれないという。
「ハクサイ栽培のコツは、生育の前半でパワーを上げさせること。生育の様子をみながら、十日〜二週間に一度、液肥を葉面散布しています。前半は窒素主体のものを散布して葉をどんどん展開させ、結球が始まったらカルシウム剤に切り替えることで、石灰欠乏症を予防しています。ハクサイは病虫害にも遭いやすいため、先手、先手で適期の消毒を徹底しています」
ハクサイの病気のなかでもやっかいなのが根こぶ病。近年は耐病性品種を導入したことで、被害を抑えられるようになっているという。
さらに病気に強く、生育しやすいハクサイの品種開発のため、種苗会社と協力して新品種の試験栽培もしている。試験栽培は地域の土壌の違いや気候にも左右されるため、かならずしも成功するわけではないが「和歌山のハクサイを次世代につなげたい」という思いで挑んでいる。

病虫害なく育ったピカピカのハクサイは、独特のカーブのある専用の菜切り包丁を使い、一個ずつ手作業で収穫される。切り口の白さは、新鮮さの証しだ。
「和歌山の甘いハクサイは、鍋物に最高です。お勧めは、あごだし(トビウオだし)の鍋。寒い時期、ぜひハクサイ鍋を楽しんでください」
ずっしりと重いハクサイを手に、ほほ笑む角田さん。年末年始、京阪神市場を中心に出荷のピークを迎える。

文=加藤恭子 写真=前田博史






