あなたが主役!
美酒鍋
- 広島県 JAひろしま女性部 広島中央地区本部(広島県東広島市)
- 2025年3月

酒蔵で生まれた郷土料理
美酒鍋
味つけは、塩コショウと日本酒だけ! 「酒都・西条」に伝わる名物鍋の作り方を女性部に教えてもらいました。
良質な地下水に恵まれ、酒造りが盛んな東広島市西条。この街ならではの郷土料理が「美酒鍋(びしょ鍋)」です。始まりは、酒蔵の賄いだったそう。
「忙しく働く蔵人さんのために考案されたので、簡単にできて、栄養もたっぷり。忙しい農家にも、ぴったりです」
そう話すのは、JAひろしま女性部広島中央地区本部部長の渡邉美恵さん(57)。他の役員といっしょに、作り方を教えてくれました。

まずは鍋にニンニクを入れ、豚肉、鶏肉、砂ずりを炒めます。調理場は、たちまち食欲をそそる香りでいっぱい。
「砂ずりを使うのが特徴です。もともと賄い料理だから、安くて栄養がある砂ずりを使うようになったんです」
と、副部長の池野芳子さん(73)が話します。
肉に火が通ったら野菜を加え、しんなりしてきたら日本酒を加えます。味つけは、日本酒と塩コショウのみ。濃い味つけをしないのは、蔵人さんが作業の合間に食べても利き酒に影響が出ないように、という配慮からだそうです。
給食の栄養士に農家料理を伝授
すべての具材に火が通ったら味見をし、塩コショウで味を調整したらできあがり。最小限の味つけだからこそ、野菜の甘み、肉のうまみがしっかり感じられます。
試食した副部長の藤井悦子さん(81)ら役員も、大満足の様子です。
「やさしい味ね。いくらでも食べられるわ」
「だしを買わんでもいいのがええ。肉だけあれば、うちにある野菜でできるもん」
日本酒ですが、加熱してアルコール分をとばすため、子どもが食べても問題なし。市内では学校給食にも登場します。渡邉さんの子どもは、給食をきっかけに美酒鍋が好きになり、郷土の歴史にも興味を持ったそうです。
学校給食の重要性を理解する女性部は、献立を考える栄養士に、地元の野菜を使った農家ならではの料理を教える取り組みもしています。
「昨年は特産の大型ピーマン〝でかピー〟やレンコンなどを使った料理を教えました。『家の光』の記事も参考にしたんですよ(笑)。こんな料理もできるのね、と栄養士さんも驚いていました」
笑顔でそう話す渡邉さんですが、夢も熱く語ってくれました。
「今後も女性部活動を通じ、食の楽しさを伝えていきたいです。以前は、地元の〝酒まつり〟で美酒鍋を振る舞っていたらしいです。復活できたら、おもしろそうですね」
「美酒鍋」の作り方

材料(4〜6人分)
- 豚ばら肉・鶏もも肉 各200g
- 砂ずり(砂肝) 80g
- こんにゃく・厚揚げ 各1枚
- 野菜 適量
(長ネギ2本、ハクサイ1/2個、タマネギ1 個、ニンジン1/2本、シイタケ4個、ニンニク2〜4片) - 日本酒 180mL
- 塩・コショウ・油 各適量
❶豚肉、鶏肉は一口大に切り、砂ずりは薄切りにする。
❷ 野菜は食べやすい大きさに切り、ニンニクは薄い輪切りにする。
❸ こんにゃく、厚揚げは一口大に切り、下ゆでをする。
❹ 鍋に油をひき、ニンニクを入れて香りがたったら、①を加えて塩コショウをする。
❺ 火の通りにくい順に、野菜(ハクサイを除く)を入れて③を加える。
❻ 野菜に火が通ったら、ハクサイを内ぶた代わりにかぶせて日本酒を入れ、鍋のふたをかぶせて蒸し焼きにする。
❼ 全体がしんなりしたら、炒めるように混ぜる。最後に味をととのえて完成。

体が温まるよ!
文=茂島信一 写真=吉田真也 写真提供=JAひろしま