つなぐ人びと

“人が集まる農園”をつくり仲間と共に地域の輪をつなぐ

  • 大阪府 JA大阪南管内(大阪府羽曳野市)
  • 2026年3月

七彩ファーム 川崎佑子さん

“人が集まる農園”をつくり仲間と共に地域の輪をつなぐ

会社員から農家へ転身し、さまざまな人が集う場にと立ち上げた自らの農園で、
地域特産の魅力の発信や収穫体験などを通じて
人と農、人と地域、人と人をつないでいます。

カテゴリ

 冬の陽だまりが心地よい日曜日。大阪府南部、羽曳野市にある「七彩ファーム」の圃場は、朝からにぎわっていました。
「ジャガイモってこんなに実がつくんだ」と驚く大人のそばで、「畑からカエルが出てきた、こわい!」と子どもたちが声を上げています。
「カエルは冬眠中だから土をかけてあげてね。秋冬のジャガイモは、皮が薄くてほこほこしておいしいので、いっぱい持って帰ってください」
 ジャガイモの収穫を楽しむ十人ほどの参加者一人一人に笑顔で話しかけるのは、七彩ファーム代表の川崎佑子さん(42)です。
 七彩ファームは、川崎さんとスタッフの長重有貴さん(34)が運営する農園です。この日は、朝から「ジャガイモ収穫&ピザ作り体験」が開かれていました。

 収穫を終えた参加者は、ピザ作りを体験。管理栄養士の資格を持つ長重さんの指導の下、生地に自家製ソースをぬって、とりたての野菜をたっぷりのせていきます。子どもから大人まで、みなさんとても楽しそうです。
 まきを足して火かげんを調整し、ピザを窯へと入れていく川崎さん。手慣れた姿は、ピザ職人さながらです。
「こんなふうに人が集う農園にしたくて、二〇二一年にクラウドファンディングでピザ窯を造りました。ピザ職人みたい?(笑)、三十回以上イベントをしているので、窯の扱いは慣れましたね」

 就農して十二年になる川崎さんは、大阪府北部、枚方市の出身です。幼い頃から外で体を動かすことが大好き。実家は農家ではないものの、小学校時代は菜園活動に親しみ、高校時代は学校の畑を担当するなど、土に触れることがずっと身近だったと言います。大学は教育学部で学び、大手学習塾へ就職。小・中学生の教育に関わる仕事には、やりがいを感じていました。
「子どもが好きだし、仕事は手ごたえもありました。ただ、デスクワーク中心の業務は向いておらず、食や環境問題への関心も強く、農業をしたいと思うようになったんです」
 三十歳を目前に一念発起し、会社員を辞めて羽曳野市の二年制農業大学校へ入学。実習先だった羽曳野市の農業法人「農園たかはし」に誘われて就職しました。園主の指導の下で、特産のイチジクや野菜の有機栽培に挑みました。
「体力には自信があったけれど、農業は慣れるまできつかった(笑)。でも、土を耕し、芽が出て、収穫する。作物を育てることが楽しいと、心から感じました。『わたしは“育てること”が好きなんやなあ』と、思ったんです」

 園主からは「やりたいようにやったらええ」と、四十アールの圃場を任され、栽培計画から小売店への営業まで幅広い業務を担いました。
 五年にわたる仕事ぶりが認められ、任された圃場を引き継ぎ、三十五歳で独立。幸運なことに、圃場で汗を流す川崎さんの姿を見ていた、地元工務店の社長から、親のイチジク畑を継いでほしいという声がかかりました。
「冷暖房付きの作業小屋も『自由に使って』と言ってくれて、前庭や圃場の整備の手伝いもしてくれるなど、ほんとうにありがたいことばかりです」
 そんな人の縁に恵まれてきた川崎さん。さまざまな人が気軽に立ち寄り、個性豊かな人たちがつながる場にしたいと、自身の農園を“七彩ファーム”と名づけました。
「就農してわかったのは、農業は一人ではできないということ。人が集い、人をつなぐ農園にしようと決めました」

 独立二年めには、川崎さんを「先輩!」と呼ぶ、農業大学校の後輩・長重さんを雇用しました。長重さんはそのときのことを振り返り、「人柄にほれて働くことを決めました。頼りがいのある温かい人で、みんなから愛されている。だから農園にも人が集まってくるんです」と、話します。
 一人で八十アールから始め、今では二人で百五十アールの圃場を運営。イチジクをはじめ、トマト、ニンジンなど年間十六種ほどの野菜を栽培しています。化学肥料、化学合成農薬を使わない有機栽培で、地元の味をつないでいくことをだいじにしています。
「羽曳野特産の大粒イチジクには、力を入れています。また、手間はかかりますが、大阪府南河内地区の伝統品種『河内一寸そら豆』や、岸和田発祥で甘みの強いニンジン『彩誉』も毎年育てています。大阪の農家として、地元発祥の野菜を多くの人に広めていきたい」
 さらに川崎さんは、地域で料理教室を主宰する料理家・長倉恵さん(50)と河内一寸そら豆を使った豆板醬作りのワークショップを開くなどし、地元野菜の魅力を伝える活動もおこなっています。
 長倉さんは、「イベントで野菜の特徴や食べ方を話す川崎さん。言葉の一つ一つから、農業への熱い思いが伝わってくるんです。話せばみんな七彩ファームに魅了されますよ」と、話してくれました。
 また、近隣の農家仲間と「はびきの農家の煮こみ会」を結成し、市内の小学生へイチジクの配布や農家マルシェの開催などで、農産物のPRをおこなっています。羽曳野市は新規就農者も多く、七彩ファームの近所には八戸ほど仲間がいるそうです。
「困り事があれば助け合っていて、農業法人化も考えています。農業は一人ではできません。みんなで地元の農業を盛り上げていきたいです」

取材・文=森 ゆきこ 写真=前田博史

ふれあいJA広場・
ローカルホッとナビ

本サイトは、全国47都道府県のJAやJA女性組織の活動をご紹介する「ふれあいJA広場」のWEB限定記事と、月刊誌『家の光』に掲載している「ローカルホッとナビ」の過去記事が閲覧できるサイトです。
皆さまのこれからの活動の参考にぜひご活用ください。

2024年3月までの「ふれあいJA広場」記事は、旧ふれあいJA広場をご覧ください。