大地のおくりもの
ゴボウ
- 青森県 JAおいらせ やさい推進委員会(青森県三沢市)
- 2026年4月

肌が白く、きめ細かい 風味の豊かさが自慢
ゴボウ
ヤマセの影響を受ける土地で、さまざまな作物に挑戦。地中で育つ根菜類のゴボウと出合いました。努力と工夫を重ねて、日本一の産地になっています。
間もなく雪が舞い降りそうな、雲の下。かすかな潮風を感じる山あいの畑では、土から掘り出されたばかりのゴボウの香気が、辺りいちめんに立ちこめていた。
青森県のゴボウの生産量は、日本一。なかでも三沢市は県内一の産地になっている。JAおいらせ「やさい推進委員会ごぼう部会」部会長(三沢地区)の田中継美さん(45)は、農家の三代目。約七ヘクタールの農地で、ニンニク、ナガイモ、ゴボウ、ニンジンの順番に輪作をしている。
「この辺りは漁師町でしたが昭和四十年代後半から、漁獲量の減少により、多くの人がより高い収益を求めて農業に転向した。うちも祖父の代までは、タコ漁などを営む漁師でした」

東北地方の太平洋側では、梅雨から盛夏にかけて冷たく湿った偏東風「ヤマセ」が吹く。ひと昔前の三沢では影響が強く、真っ白な冷たい海霧で覆われた。ヤマセの別名は「冷害風」。夏でも朝夕の気温が下がり、作物の生育に悪影響を及ぼす。
「昔の人たちはいろいろな作物に挑戦したそうですが、ヤマセの影響で、果菜類や果樹はどれもだめだった。その中で、この土地に適したのがゴボウなどの根菜類。潮風に含まれるミネラルが、根菜をおいしく育ててくれることも利点でした」
真っ黒な腐植に富んだ黒ぼく土の土壌も、根菜類にとってうってつけだった。山際に近づくと、より水はけのよい茶色がかった山砂混じりの土になり、スラリと伸びたきれいなゴボウが育つ。

肥料控えめが長く育てるコツ
播種は、五月〜六月中旬。まず準備として、トラクターにロータリーを取り付けて、畑の土をならす。リン酸などの肥料を施して、再度ロータリーで平らにしていく。その理由を、田中さんはこう説明する。
「ゴボウ栽培は、徹底的に畑を平らにすることがたいせつ。畑が波打っていると、発芽がそろいません。ゴボウは葉が大きく広がるので、後から出た芽は葉陰に入ってしまい、育たないためです」

畑全体を平らにしたら、幅十五センチ、深さ百二十センチの細く深い溝を機械で掘り、畝の準備をする。地下に硬い層があるとゴボウが曲がって育つため、播種する部分は、深く掘って土を軟らかくほぐす必要があるという。
また、ゴボウは肥料分が多いと茎が伸びづらくなるため、田中さんは追肥をせず、地域の養鶏場の鶏ふんなどを用いた元肥のみで育てている。
「栽培を始めた頃、長いゴボウができずに悩みました。そんなとき、あまり施肥をしていない畑の端だけが、長くなることに気づき、肥料を控えめにしたところ、うまくできるようになりました」

海外にも販路を広げたい
準備を終えたら、いよいよ播種だ。しかし近年は、干ばつに悩まされることが増えた。昨年は、五月に雨が降らず、黒い土が白く見えるほどカラカラに乾燥してしまった。灌水設備はない。水を打ったとしても、山砂混じりの畑は瞬く間に蒸発してしまう。播種前の干ばつに見舞われ、生産者は不安にかられたが、どうにもならない。
「そのうち降るべぇ」と田中さんは雨を待ったそう。例年より五日ほど遅くなったが、なんとか播種をした。
予想どおり、発芽率は激減。全体の二~三割が発芽しなかった。さらに生育中の暑さも厳しかった。七月後半から九月初めにかけて気温三〇度以上の日が続き、手作業の除草に四苦八苦。少し涼しくなったと思ったら、次は害虫のヨトウムシが大発生した。
「早めの対処で、害虫被害はなんとか抑えられ、最終的には品質のよいゴボウになりました。しかし例年十アール当たり二~二・五トンの収量が、一・五~二トンに落ちました。天候はどうにもなりません」

収穫は九~十一月。雪が降ると秋冬の収穫は終わり、翌春、雪解けの三月下旬〜四月に、畑で越冬したものを収穫していく。
JAおいらせでは、生産者から届けられたゴボウを凍らないよう冷蔵施設で保存し、五月〜八月中旬を除いて長期出荷している。



この地域のゴボウの魅力は、「肌の白さと、きめ細かさ。そして風味の豊かさ」と田中さんは自信を見せる。
「ゴボウは東洋では、漢方の素材として知られる健康効果の高い野菜です。日本一のゴボウ産地として、今後は海外にも販路を広げられればと考えています」
春の日ざしが大地の雪を解かす頃、ふたたびゴボウの香気が辺りに立ちこめる。

文=加藤恭子 写真=鈴木加寿彦





