大地のおくりもの

シシトウ

  • 高知県 JAおいらせ やさい推進委員会(青森県三沢市)
  • 2026年5月

南国の太陽と技術で育てる

シシトウ

温暖な気候を生かして全国有数のシシトウ産地になった南国市。
さまざまな課題に直面しつつも日本一の産地を守る努力が重ねられています。

カテゴリ

 シシトウ(シシトウガラシ)は、トウガラシの仲間。ピーマンと同様に、未熟な青い実を収穫する。辛みが少なく、調理が簡単で、焼き物や炒め物、揚げ物など、さまざまな料理で独特の風味を味わうことができる。
 全国で、もっとも多くのシシトウを生産しているのが高知県。そのシェアは、じつに約五割にもなる。とりわけ冬から春にかけては、約八割が高知県産だという。
 県内での栽培の歴史は昭和十三年から、高知市の隣にある南国市で始まった。同市は今も県内最大のシシトウ産地であり、JAの生産部会だけで四つ(中央、南部、長岡、十市)もある。
 そのうちの一つ「南国市中央シシトウ部会」の都築廣和さん(47)の圃場を訪ねた。現在、部会長を務める都築さんだが、十年ほど前に就農してシシトウ栽培を始めた。
「実家も農家ではなかったので、もともとは土地を持っていませんでした。かといって、そんなに広い土地を借りることはできません。そこで少ない面積でも、収益が上がるシシトウを選んだんです」
 そして始めたのが、ハウスでの促成栽培だった。九月に苗を定植して、十一月から翌年六月まで収穫していく。長期にわたり収入がある安定性も魅力だった。

シシトウにとって快適な環境を

 だが、苦い経験もしたという。定植後から一定期間、水やりを抑えることで強い株になると聞いて、試したことがあった。
「でも、だめでした。シシトウは最初にしっかり根を張れないと、茎が細くなり、実も小さくなるんですよ。それ以来、最初にしっかりと水を与え、光をしっかり当てることを心がけています」
 シシトウ栽培は、最低でも気温二〇度の環境が必要。南国市でも、十月末~翌年五月は加温が必要になる。ハウスの室温は自動制御だが、設定温度はこまめに変えているという。
「たとえば、日の出前は温度を上げておきます。そうしないと、日の出後にガンと温度が上がったときに、結露が葉に付くんですよ。それが病気の原因になるんです」
 さらに、ハウス内の換気にも細心の注意を払う。
「シシトウには、蒸し込むのが一番の大敵なんです。とくに季節の変わり目が危ないので、毎日、換気をしています。今日くらいええやろう、が命取りになる。その一日で、病気にやられることがありますから」

日本一の産地を支える職人技

 一方、収穫では「とり遅れないこと」がもっとも重要だ。サイズがMからLに大きくなると値段が落ち、それを超えると規格外になる。
 だがシシトウは、緑色の葉に埋もれるように点在して実り、意外と見つけることが難しい。そのうえ、収穫してよいサイズを見極めながらの作業は、経験を必要とする。
 さらにもう一つ、高知のシシトウには、熟練の技術がある。JA集出荷場で働く「つめこ」さんによるパック詰めだ。生産者から届く大量のシシトウ。その一本一本の等級や規格を速やかに判断し、手際よくパックに詰めていく姿は、まさに職人技である。

産地の未来を守るための改革

 そんな日本一のシシトウ産地も、変革期を迎えている。経費の高騰や高齢化などにより、生産者が年々減少。南国市でも十年前は百人ほどいたが、今では半数になった。
 そこでJA高知県が決断したのが、包装資材の変更である。今年九月からはピーマンと同じ袋詰めにして、作業を機械化。JA集出荷場の受け入れ量を拡大する。新規就農者を受け入れやすくし、栽培面積の拡大もしやすくする。

 圃場では、新品種の導入も進む。従来のシシトウは、ときどき辛い実が混じっていることがあり、学校や病院の給食では避けられてきた。
 そこで、高知県が開発したのが、辛くない新品種『ししまろ』だ。さっそく、市内の学校給食で提供されるなど、普及拡大に向けて動きだしている。
「重油代や人件費の高騰、生産者の減少など課題はあります。でも、自分たちにできることをして、なんとか産地を守っていきたい」
 そう話す都築さんは、続けて力強く語ってくれた。
「高知のシシトウは高品質。主役にはなれんけど、焼き肉などには欠かせない名脇役です。ぜひ高知のシシトウを味わってください!」

文=茂島信一 写真=吉田真也

ふれあいJA広場・
ローカルホッとナビ

本サイトは、全国47都道府県のJAやJA女性組織の活動をご紹介する「ふれあいJA広場」のWEB限定記事と、月刊誌『家の光』に掲載している「ローカルホッとナビ」の過去記事が閲覧できるサイトです。
皆さまのこれからの活動の参考にぜひご活用ください。

2024年3月までの「ふれあいJA広場」記事は、旧ふれあいJA広場をご覧ください。