地域にエール!
50代で就農 理事になり抱く真っ赤な情熱
- 岐阜県 JA小松市 今川浩美さん(石川県小松市)
- 2025年3月

農業、地域を支えていく!
50代で就農
理事になり抱く真っ赤な情熱
地域の役目として引き受けた女性部支部長。それが、きっかけとなり五十代で農業の道へ。
新米生産者としてまた、JA理事として奮闘する日々です。
加賀平野に位置する石川県小松市は、北陸三県一のトマト産地。六十年の歴史があり、今では年二作のハウス栽培で「小松とまと」のブランド名で出荷されています。
「十二月に出荷するトマトは、サクッとした歯ごたえと、みずみずしさが特徴。おいしいですよ」
圃場で収穫しながら話すのは、トマト生産者であり、JA小松市理事の今川浩美さん(60)です。意外にも就農二年めの新人生産者。なんと農業に関心を持ち始めたのは、五十歳手前のときでした。平成二十三年、JA小松市女性部で支部長を務めたことがきっかけだった、と振り返ります。

「JA小松市女性部は非農家が八割です。わたしも、家族が営む会社で事務をしていました。女性部支部長も地域の役目として、かるい気持ちでお引き受けしたんです」
しかし活動や視察に参加するなかで、食農教育や輸入農産物の問題に直面。農業は家庭だけでなく国全体の食を支えている、と強く実感することに。積極的に活動へ携わり始め、三年後にはJA小松市女性部部長へと推薦されます。
「わたしでいいのかしら。でも女性部の仲間と、農業や地域との関わりを増やす活動がしたい、と決心しました」

そこで始めたのは、小学生親子が対象の「わくわくキッズ農園」です。店で販売される野菜しか知らない子どもが、播種から収穫まで体験する企画を立ち上げます。
「種まきは楽しい、収穫した野菜がおいしかったなど、親子共に反応がよくてね。農業に関心を持つことは、地域にとってもだいじ。今も続いている定番の活動です」
キッズ農園の成功を受け、大人向け農業体験教室「農加俱楽部」も誕生。圃場での栽培体験や加工品づくりをしています。
「地域の生産者と消費者をつなぐ場を広げていけたことは、女性部活動を続ける大きな力になりました」
JAのおかげで新たな人生を歩む
農業や地域に向き合うなか、自身も農業に挑戦したいと思うようになった今川さん。令和二年にJA広報誌で、新規就農者の育成をめざす「アグリスクールこまつ」の開設と一期生の募集を知ります。
内容はJAが管理する園芸ハウスで、トマトを中心に園芸栽培を二年間学び、卒業後は就農してJAが貸与するハウスや設備を使って、園芸作物の栽培・出荷に取り組むというものでした。
「学校は無償で、独立後の初期投資も少ない。やるしかないと迷わず応募です。子どもたちも応援してくれました」
三年四月、三人の同期生と学び始めます。一年めは、園芸作物のハウス栽培や土耕栽培の指導を受けて、二年めからは〝プレ就農〟をする実践型でした。
なにもかも一人ですることで農業の難しさ、たいへんさを痛感。不慣れな作業や体力の問題もあり、栽培が遅れがちだった今川さん。それが収穫に大きく影響します。
「同期の男性とは収穫量が半分近く違って。指導の先生と原因を探りました。時期を逃すと取り返せない点があることを知り、進行を見直して改善に取り組みました」

独立後は、園芸団地内のハウス四棟(十一アール)を借りてトマト栽培に挑む日々。また女性部の仲間と、新たな課題にも取り組んでいます。それは廃棄野菜の削減をめざした加工品の開発です。
「廃棄野菜を減らしたい。農家になって、思いはより強くなりました。規格外トマトを使ったカレーを商品化して、イベントで販売しています」
六年秋の「JAまつり」では、能登支援の「能登牛×トマトカレー」が大好評。評判を受けて、JA直売所での販売も決まったそう。そして現在、JA小松市の理事としても、汗をかく毎日です。
「JAのおかげで農業や地域について学べて、農家として新たな人生を踏み出せました。地域の農業を守り、次世代が食に困らない環境をつくっていきたいですね」
「小松とまと」に負けない、真っ赤な情熱を抱いて、今川さんは〝農業と地域〟を支えていきます。
文=森 ゆきこ 写真=前田博史