つなぐ人びと
国際園芸博覧会を機に花と緑をより身近に
- 神奈川県 JA横浜管内(神奈川県横浜市)
- 2026年5月

加藤園芸 加藤佑太さん
国際園芸博覧会を機に花と緑をより身近に
花と緑の歴史が薫る横浜で、会社員から園芸農家へ転身。
色鮮やかな花々を育て多くの仲間と共に地域に笑顔を咲かせています。

神奈川県横浜市は、開港後の明治期、西洋では珍しかったユリの輸出をはじめ、バラやチューリップなどの輸入の拠点となって、世界との園芸交流がおこなわれてきた歴史があります。そんな異国情緒薫る大都市で、花苗生産を手がけているのが「加藤園芸」です。
現在同農園の運営を担うのは、加藤佑太さん(39)です。圃場は、ハウス五棟分、およそ十アールあり、ポーチュラカ、パンジー、ビオラ、ペチュニアなど、年間二十種類ほどを栽培し、生協の通販やJAの直売所などに卸しています。

「三十数年前に創業し、昔は野菜も作っていましたが、1990年に大阪で開かれた『国際花と緑の博覧会』とともにガーデニングブームが起こり、義父が花卉栽培に切り替えました。ぼくは二代目で、じつは婿養子なんです」
加藤さんは、農業大学の同級生・千秋さん(39)との結婚をきっかけに、勤めていた会社を辞めて、千秋さんの父・一男さん(75)の下で就農しました。ちなみに加藤さんの実家は茨城県のコメ農家。同じ農家として、佑太さんが妻の実家で花卉農家となることは、両親ともに応援してくれたそうです。

「就農後二年間は、見習い期間でした。うちは花苗生産でポットで栽培するので、こまやかな作業が多いんです。“畑違い”という言葉どおり、ときどき手伝っていた実家のコメとは、まったく違う作業に、驚くことばかりでした」
見習い一年めは義父の指導の下で仕事を学び、二年めからは栽培計画に沿って作業を任されるように。しかし、仕事に慣れてきた加藤さんは、自身の判断で少し早めに施肥をしたところ、その大半を枯らしてしまったそうです。
「取り返しのつかない大失敗でした。枯れた花の処分は、すごくつらかったです。でも義父は『失敗も経験』と言って、怒らずに、そこから得られる学びのたいせつさを教えてくれました」
以後、加藤さんは圃場にかならずノートを持参するようになりました。施肥や防除後の苗の様子を書き留めて、細かな変化を見逃さないように努めました。当時のノートをたまに見返し、今でも参考にすることがあるそうです。

見習い期間を終えた加藤さんは、近隣の生産者に誘われて、JA横浜の青壮年部に入部しました。
「就農当初はなじみのない土地だったので、友人は一人もいなくて(笑)。緊張しつつ入部したら大歓迎してくれたんです。今につながる仲間ができたのは青壮年部のおかげです」
また青壮年部などで紹介された花卉生産者の圃場へたびたび出向き、栽培方法や圃場運営を教えてもらったと、当時を振り返ります。
「横浜の人は、自分の仕事に誇りを持っている人が多い。なんでも教えてくれるけれど、『教えてもできる?』と試されているようにも感じました。通い続けるなかで、なんとなく認めてくれるようになっていったかな……(笑)」
都市農業にまい進する青壮年部の仲間との出会いに刺激を受け、仕事とともに地域活性化の活動にも取り組むようになりました。

就農十年を過ぎた頃から少しずつ加藤園芸の運営を引き継ぎ、2025年に事業承継しました。二代目として、まず実施したのが栽培品目の見直しです。主力のシクラメンは、諸経費が年々売り上げを圧迫していることに注目。年末年始のギフトとして栽培期間も長く、続けることは厳しいと判断しました。
「配送料の高騰や贈答文化の変化で、撤退を決めました。義父も『決めたならそれでいい』と委ねてくれました」
一方で、新たな挑戦も始まっています。それは花苗生産の技術を生かした観葉植物の苗栽培です。目下、コウモリランやゴムの木など、二十種類ほどの観葉植物をハウスに集めて研究中です。
「海外産のものが多くて、研究のしがいがあります。花と違って肥料や農薬への反応が遅いなど難しさもありますが、数年後には、花と緑のどちらも主力にしたいですね」
さらに加藤さんは、数年前からSNSで栽培品種や情報などの発信を続けて、花への興味や関心を広げる取り組みを続けています。直売所への出荷時には、「帽子×眼鏡の花農家が行きます! 声をかけてださい」とかならず発信。お客さんとの会話の機会をたいせつにしています。
「花の選び方や育て方をお話ししています。お客さんの声を直接聞けるので、得るものも多いです」

加藤さんが、今大きな期待を寄せるのが、地元の横浜市で開催される「2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)」です。
2022年に主要事業者が決まると、当時役員を務めていたJA横浜青壮年部では、加藤さんが中心となって、地元の生産者に周知するための広報活動に努めました。
さらに地元を盛り上げようと、神奈川県花き園芸組合連合会の鉢物委員会で園芸博担当を引き受けた加藤さん。関係者と協議を重ねて、「2027年国際園芸博覧会」を彩る花を、地元の生産者が担当することにつなげました。
「県内の鉢物生産者は、開幕を飾るパンジーやビオラを生産します。数か月かけて鉢数や出荷品種の調整をおこないました。うちでも一万鉢以上を出荷予定。たいへんですが、やりがいも大きい。仲間と共に全力でがんばりたい」
ビッグイベントをきっかけに、花や緑に注目が集まり、もっと人々が身近に楽しんでもらえるような存在になればと、加藤さん。
「花を買うことを、お祝い事や弔事などの、特別なことと考える人は意外に多い。でもふだんの日に自分のために買う文化を根づかせたい。花や緑のあふれる暮らしに向けて、仲間と活動していきます」

文=森 ゆきこ 写真=福地大亮






