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インドネシアと日本を農業でハッピーに!

  • 広島県 JA福山市管内(広島県福山市)
  • 2026年6月

わかいふぁーむ 若井克司さん カーエル・ファーミさん

インドネシアと日本を農業でハッピーに!

国内では希少なアジア野菜の生産に挑戦する若井克司さんとカーエル・ファーミさん。
さまざまな垣根を越えて、農家だからできる国際交流活動を始めています。

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「これは、キャッサバ。イモの仲間で、いろいろな料理に使います。これは、タマリンド。葉っぱに酸味があって、ぼくのふるさと、ロンボク村の伝統料理には欠かせません」
 東南アジアの気候のような蒸し暑いハウスの中で、インドネシア人のカーエル・ファーミさん(37)が栽培しているのは、日本では珍しい「アジア野菜」です。ファーミさんは二十四歳のときに技能実習生として来日し、農業の勉強を続けて、二〇二五年に独立。広島県福山市で自身の農園を経営しています。

 アジア野菜を作るようになったきっかけは、自分の実体験にありました。イスラム教徒であるファーミさんは、宗教上、豚肉を材料としたものは食べることができません。
「日本の加工品はブタを使っているものが多いので、安心して食べるには、自分で料理を作るしかありません。でも、欲しい野菜がなかなか手に入らなかったんです」
 日本に暮らすインドネシア人の中には、自分と同じ悩みを持つ人も多いはず。そう考え、当時働いていた農園主の若井克司さん(51)に、いっしょにアジア野菜の栽培・販売することを提案。それから、二人の挑戦が始まりました。

 もとは雇用主で、現在はビジネスパートナーとなった若井さんは、半導体業界で働く会社員でした。忙しい日々の中で「自分は食べることが好き。食べ物を作る側になりたい」と、地元・福山市の特産品であるホウレンソウ栽培の担い手として新規就農を決意。開園して約十年がたった頃、結婚を機に広島にやってきたファーミさんと出会い、アジア野菜の栽培を始めました。

「それまでは作るだけで、自分で売ったことがなかったんです。だからファーミからの提案は新鮮でした。なにより、『いっしょにやりたい』と言ってくれたことがうれしかった。すぐに『いいね!』と、快諾しました」
 しかし、その道のりは、試行錯誤の連続でした。四季のある日本で熱帯地域である東南アジアの野菜が作れるのか、そしてどれくらい売れるのか、わからないことだらけです。それでも「まずは、やってみよう」と、二一年に試験栽培を開始。種を取り寄せ、栽培データをとりながら、二人で研究を重ねました。
 若井さんにとっては、初めて見る野菜ばかりです。
「定植は三月ごろから。収穫は五月から十一月までできます。でも、真冬はハウスを使っても難しい」(若井さん)
 アジア野菜といっても、国や地域によって、野菜の種類も需要もそれぞれです。近隣に住む外国人に意見を聞いて、試食をしてもらいながら、栽培する作物を絞っていきました。

 宣伝活動は、おもにファーミさんの担当です。福山市とその周辺は、造船業や製造業が盛んで、外国人が多く働いています。そうした人々に向け、SNSを使って情報を発信しつつ、ハラルショップ(イスラム教徒向けの専門店)などに足を運んで売り込んだところ、インドネシアだけでなく、さまざまな国の人々が、直売所に野菜を買いに来るようになりました。SNSからの注文も入るようになり、現在では全国から注文がくるそうです。
「インスタグラムのフォロワー数が千人を超えたときには、やった! と思いました。外国人から『やっと見つけた、この野菜』という、うれしいメッセージもたくさん届きます。ぼくらの野菜が喜ばれていることがすごくうれしい」
 ファーミさんは笑顔でやりがいを語ります。

 提供しているのは、野菜だけではありません。野菜を買いに来るイスラム教徒のために、若井さんは農園内に小さな礼拝室も作りました。
「彼らにとって礼拝室は、トイレと同じくらい必要な場所。言葉や文化の違いで孤独を感じる外国人も『ここに来れば』と、安らぐ場所にしたい」
 集まった人たちとバーベキューを楽しむこともあり、農園は、気軽に国際交流を楽しめる場となっています。

「とくにインドネシアの人はオープンな人が多いから、通りかかった近所の人も『おいでおいで』と引っぱってくるんですよ(笑)。でも、そこで話ができる。話をすれば、理解が生まれ、共感が生まれる。外国人のマナーが問題になったりもするけれど、おたがいのことを知らないことが原因だと思うんですよね」
 若井さんは、ファーミさんと話すうちに、彼のふるさとが抱える環境問題についても関心を持つようになりました。人口増加により、食料増産が急務となっているなか、ロンボク村の農業にはウシが不可欠ですが、そのふん尿が水路に垂れ流しになっており、環境汚染を引き起こしていると言います。二人は国際協力機構の協力を得て、インドネシアに出向き、牛ふん堆肥の作り方と使い方を指導。今後は、堆肥を使った農業の仕組みづくりに取り組む計画です。

 また、若井さんは、農家として受け入れてくれた福山への恩返しも考えています。
「アジア野菜を広めて、ホウレンソウの出荷がない夏場の収入源にできないかと考えています。また、福山は農業の担い手不足が深刻な一方で、インドネシアには若い人材がたくさんいます。人材を受け入れ、育てて、ファーミのように独立していける仕組みを作れば、産地を守ることにもつながるかもしれない」
 ふるさとで農業をすることが目標だったファーミさんの夢も、広がっています。
「日本とインドネシアを行き来しながら、両国の架け橋になりたいです。インドネシアで日本のホウレンソウも作ってみたいですね。日本に滞在経験のあるインドネシア人たちが、日本のものを食べたがっていますから」
「いいねぇ。ぼくらのブランドの野菜をインドネシアで立ち上げるのはどう?」
 楽しそうに夢を語り合う二人。その後ろには、こんな言葉が掲げられていました。
「農業で世界をハッピーに!」

文=茂島信一 写真=松尾 純

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