大地のおくりもの
ミニトマト
- 高知県 JAひまわりミニトマト部会(愛知県豊川市)
- 2026年6月

赤く色づいて鈴なりに実る
ミニトマト
もともと大玉トマト、メロンの産地でした。昭和五十年代に市場の要望に応えてミニトマト栽培を開始。
今では全国有数の産地に成長し甘くて真っ赤な粒を実らせています。
愛知県東部(東三河)の山間部を流れ、三河湾に注ぐ豊川。その水を利用した豊川用水が、渥美半島まで広い大地を潤している。
豊かな水と日射量、温暖な気候に恵まれた豊川市周辺では、昭和五十年代に、当時まだ珍しい作物だったミニトマトの栽培が始まった。五十六年には「ハニーレット」というブランド名が誕生。甘くて真っ赤な小粒の果実が、市場で高く評価されてきた。
JAひまわりミニトマト部会の本部監事を務める夏目久稔さん(65)は、約十三アールのハウスでミニトマトを水耕栽培している。早春のハウスでは、若草色の茎葉が茂り、赤く色づいたミニトマトが鈴なりに実っていた。

「くるくる誘引」で収穫しやすく調整
「きれいな葉色が、健康なミニトマトの証しです。栽培で心がけているのは、ストレスを極力与えないよう環境を整えてあげること。そうすれば、植物は潜在能力を最大限に発揮して、おいしい果実が実ってくれます」
もともと非農家出身で、機械部品の営業マンだった夏目さんが、新規就農したのは平成十一年。当時の取引先が開発した独自の水耕栽培技術を知り、ミニトマト栽培に取り組む決断をした。
「タンクの培養液がポンプによって循環し、植物の根に栄養と酸素を供給する循環式水耕栽培です。会社員時代、取引先で一粒の種から一万五千個のミニトマトをつけたという事例写真を見てびっくり。飛躍的に生産性を上げることが可能だと知り、挑戦したいと思いました」

就農当初から、夏目さんは農作業の効率化を追求してきた。その一つが、全国的にも珍しい誘引技術「くるくる誘引」。栽培ベッドの端にあるレバーを操作するだけで、くるくると上部で巻かれた一列全体の誘引ひもを一気に下げ、すべての実を収穫しやすい位置に調整できる。
一般的なミニトマトの誘引作業は、早い人でも一本八秒ほどかかる。しかしこの方法なら、わずか二秒で二百本以上のミニトマトの茎を一気に下ろし、横の誘引ひもを足したり、茎を留める作業をしたり、一人でも効率よく誘引作業を進められるという。
「循環式水耕栽培の勉強会を通じて知り、他県の生産者に見せてもらった方法です。当初の設置費用はかかりましたが、今でもこれより早い方法を見たことがありません」
と、夏目さんは笑う。

また、生育促進のための二酸化炭素を発生させる熱伝導冷却装置、天候などにより天窓の開閉などをする環境制御装置は、いずれも低コストでの自作。地下部はオゾン発生器の導入により二十四時間、完全除菌している。
「消毒のための塩素を使わず、オゾンによって除菌することで、カルキ抜きなどが不要になりました」
ハウス内に咲いているピンク色の花は、フウチョウソウ科のクレオメ。害虫のコナジラミ類の天敵、タバコカスミカメのすみかとなる「天敵温存植物」で、この天敵の活躍のおかげで、農薬の使用を最小限に抑えている。
「天敵は増えすぎてもよくないので、扱いが難しいところもあります。そのほか、うちでは植物が本来持つ力を引き出すため、バイオスティミュラント(生物刺激剤)の葉面散布も取り入れ、健全な生長を促しています」
「朝検」と「成績表」で技術の底上げ

JAひまわり営農部の小林恒喜さんは、ハニーレットの品質は、夏目さんら生産者のたゆまぬ努力と、厳しい検査体制によって守られている、と説明する。
「収穫後、ハニーレットは生産者が選果して、パック詰めをします。それだけで終わらずに翌朝、全部のパックを目視でチェックしてから、出荷場に届けてもらっています。これを、わたしたちは〝朝検〟と呼んでいます」

さらに出荷場では、JA職員が全ケースをチェックする。生産者ごとのチェックシートがあり、着色・割れ・へた落ち・傷・玉ぞろいなど各項目の評価が公開されている。生産者にとっては、いわば〝成績表〟だ。全員の成績が見えることで、改善法の情報共有や、産地全体の技術の底上げにつながっている、と小林さんは続ける。
「年三回ほど、部会で勉強会も開催しています。みんなで産地の評価を高めていこう、とがんばっています」
出荷のピークは四~六月。ピカピカに輝く粒のそろったミニトマト「ハニーレット」が、首都圏を中心に出荷されていく。

文=加藤恭子 写真=前田博史






