つなぐ人びと
「狩女」の活動で地域資源を守り、生かし、つなぐ
- 石川県 JA能美管内(石川県能美市)
- 2026年7月

合同会社 狩女の会 代表社員 福岡富士子さん
「狩女」の活動で地域資源を守り、生かし、つなぐ
四十代で猟師となって、全国の女性猟師「狩女」をつなぎ、狩猟の魅力やジビエのおいしさを発信。
能登半島地震の被災を乗り越え、日本の里山を守ろうと、猟師の担い手づくりに奔走しています。
春めきだした石川県能美市の里山。箱わなを見回る、猟師の福岡富士子さん(56)の姿がありました。
「ここは知人の畑。中山間地なので獣害も多くてね。ジャガイモを掘り返されたと相談があり、数日前にわなを仕掛けたところです」
イノシシの動きを読みながら、わなに張ったテグスを調整する姿は、人と獣の知恵比べを体現していました。

福岡さんは、全国の女性猟師の会「狩女の会」を主宰する一方で、ジビエを使った総菜や加工品の製造・販売、皮革細工の製造などをおこなう、地域資源活用コンサルタントとしても活動しています。
福岡さんが狩猟の世界に飛び込んだのは、四十歳の頃でした。きっかけは、自給自足をめざし、実業家から猟師へ転身した元夫。無収入の元夫を支え、白山市で皮革工房兼カフェを運営していた福岡さんのもとには、猟師仲間が集まるようになりました。
「獲物と対峙し命と向き合う話は、すごくおもしろくて。先輩猟師が話す猟師言葉もかっこよくてね。わたしも同じ体験をしたい、狩猟をやってみたいと思ったんです」

二〇一四年に狩猟免許を取得。同時に妊娠がわかり、子育てをしながら活動を始めました。主婦をしていても、仕事をしていても猟ができるかたちを模索するなか、一六年には、女性猟師の仲間と共に「狩女の会」を設立し、一八年には獣肉解体処理施設を開設。
「初めてイノシシを解体したときのことは忘れられません。命をいただくありがたみを実感しました。だから尊い命を廃棄するのではなく、『皮も肉も生かしたい』という思いを伝えるためにユーチューブでの動画配信を始めました」

狩猟やジビエ料理について発信していると、福岡さんのもとに、取材や講演の依頼が押し寄せるようになりました。全国へ講演に出向くなかで、狩猟の担い手不足を目のあたりにし、自然環境を守るには猟師が必要だと実感。そこで、行政や若者、女性に向けた狩猟講習会を始めました。
離婚をきっかけに、一八年に穴水町へ移住。圃場を借りて農業をしながら、狩猟話やジビエを楽しめる農家民宿を開業します。しかし開業のわずか二か月後、能登半島地震で建物は全壊しました。
「家も仕事もなくなり、借金だけが残って。今でも思い出すとつらい。猟師仲間や知人が物心両面で支えてくれたことが励みになりました」
生活を立て直すため、能美市へ避難。愛車をキッチンカーに改装してジビエ料理などの販売を始めます。明るい人柄や珍しい料理が話題となり、常連客でにぎわう人気のキッチンカーとなりました。

震災から二年がたち、能美市を拠点にすることを決めた福岡さんは、今年六月に、ジビエを使った総菜や弁当を製造・販売する「惣菜屋 富士SUN」を新たに開業予定です。
「ジビエとともに、能登のカキや能美の野菜を使ったオリジナル総菜を販売します。能美や能登の力となり、狩猟文化を伝える場にしたい」

十年前と比べて、石川県では狩猟免許を取得する女性が五倍に増加。福岡さんの活動が、成果になり始めています。二五年には農林水産省の「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」にも選ばれました。
「猟師として、地域資源を守り、生かし、次世代へどうつなぐかを考えています。女性や若者の免許取得者を増やしたいですね。奥深く魅力的な世界が広がっていますよ」

取材・文=森 ゆきこ 写真=中西 優





